空と科学とファンタジー

主に飛行機に関する科学について書いています

TASへの変換

Webサイト Data Flight Web の立ち上げで、まず試験的に作ったページがIASからTASへの変換です。まったく知識がない人向けにもわかるように説明します。

IASとはInstrument Air Speed(計器速度)

TASとはTrue Air Speed(真対気速度)

厳密にいうとこれらの間に別の速度が入ってきます。順に説明していくと、IASはそのままコクピットの速度計に表示される速度です。パイロットはこれに基づいてナビゲーションなど行うわけです。速度計がなければ飛行機の速度を正確に知ることはできません。ここで計器は人間の作った装置である以上、表示誤差がありますが、その誤差については計器の中で補正されているものと考えられます。

次にCAS(Calibrated Air Speed:修正対気速度)「静圧誤差」と「ピトー管取り付け誤差」を補正したものです。

ここで飛行機の速度計のしくみについて説明します。飛行機の機首あたり(旅客機であればコックピット窓の下あたり)に前方に突き出るような管があり、それを「ピトー管(Pitot Probe)」と呼びます。そして飛行機の横っ腹に穴が開けられていて、それを「静圧口(Static Port)」と呼びます。飛行機が動くとピトー管には空気が入ってきますから、その分だけその管内の空気の圧力は大きくなっていきます。これを「動圧」と呼びます。一方、横っ腹に空いた穴から測定される圧力は、飛行機の速度に関わらず外気圧と等しくなります。これを「静圧」と呼びます。

飛行機の速度はこの動圧と静圧の差から計算されたものです。このしくみは小型機から大型機まで基本は同じです。

ここでピトー管の取り付け位置が変われば胴体の形などに影響されて多少は変化してしまうので、「ピトー管取り付け誤差」というものが出てきます。Static Portも同様です。

この誤差を修正したものがCASというわけです。

EAS(Equivalent Air Speed:等価対気速度)

速度が速くなりすぎると、空気が圧縮されて正しい値を示さなくなります。CASにこの空気の圧縮性誤差を修正したものがEASです。

そして速度計は空気の密度も補正しなければならず、温度によって補正されます。EASにこの密度補正をすることによってようやくTASとなり、これが空気に対する真の飛行機の速度です。

旧型の速度計であればこれだけの補正を行わなければいけないわけですが、実際には機内のコンピューターを介して電子的に処理されるため、CASとEASはすでに補正されたものがIASとして計器に示されると考えています。

 長くなったので続きは次回の記事で。